藤村の『嵐・ある女の生涯』を読み始める。
毀誉褒貶のたえない藤村。すくなくともニホン近代文学に可能性を示唆することができたひと。『夜明け前』や『家』など長編をはじめほとんどのナラティヴを読んできて、それなりの理解に及んでいるはずの藤村であるが、こういう小品が並んだものは、ある意味で等身大の藤村、というか、自分のもっている藤村イメージの根元をえぐられるようで快感を感じるほど。やはり長編と短篇とでは、世界の見方がこうまで異なってくるのか、などという印象をもつ。都市と農村のアナロジーにも詳しく、その方面の研究にも役立ちそうな素材。
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