一生のあいだに読めるかどうかさだかではなかった『 戦争と平和』もやっと四分の三を読み切るところまで至った。読む前にはこんなものだろうと思っていたことが、半分は当たっていて、もう半分ははずれていたという印象(つまり、そんなこと、どっちみち当てにならないということかな?)。
つまりは、ロシア帝政とは何なのか、ナポレオンとはだれなのか?(もし話を大きくしても許されるならば、ヨーロッパとは何なのか、ということでもありそう、なぜならナポレオンはヨーロッパ全体のモンダイでもあるのだろうから)。
そういう込み入った、ひと言ではいえないようなことを長大な巻を用いて解き明かしていく。長大であれば当たり前のことと思われるが、細部、つまりはみ出た話におおいに惹かれる。それはただリアリティを盛り上げるということだけに限定されていない。はみ出た話を読むことによって読む者を否応なく引きずり込んでいってくれる。つまりは本を読むことの原初的な体験、読む者が本のなかに生きることを可能にしてくれる。細部というものがこんなにありがたいものだとは。
各人物は、忠実にその役割を担って踊ってくれる。その各人物のリアリティにより、物語にメリハリがついてくる。ただしそれがあまりにでしゃばってくると、ときとしてメロドラマに堕する危惧あり。
ということで、ここではナポレオン軍のモスクワ侵入と滞在の行状までが描かれる。
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