ひとはひるむ。なぜそれがそこにあるのか。なぜそれを見てしまったのか。思ったことをだれに伝えたらいいのか。いや、むしろ、口をつぐまねばならないのはなぜか、と。えてして、自らに思考停止を命ずる。もしそれに追いかけられでもしたら、と動揺する。なんとか振り切らねばならないとこころに決める。しかし、あるとき、もはや自分の手には負えないことに気がつく。ああ、なぜそれを見てしまったのか。悔いにさいなまれる。どこまで逃げればいいものか。逃げおおせるものだろうか。近づくこともできないし、かといって遠ざかることもできない。
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