しばらく前に植物の不思議なちからについての中公新書を読み、おおいに啓発された。植物と人間の接点は耕作にあるが、薬草という部分も見逃せない。18世紀初頭のフランス圏の末端にての異端の若い薬草碩学の話をいま読んでいて、じつに刺戟的。植物学は、生あるもの同士のあいだの直観である。苦しんでいる人間と、それをやわらげることができる植物とのあいだの、緊急にして必然的な交感作用を見抜くことができる、あの直観なのだ。この考え方がイスラム世界においてさえ際立って見えてくることに驚きを感じざるをえない。キリスト教社会にとっては異端でしかない話であるかもしれないが。
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