きわめて微妙な揺れを感じたとき、わたしはクリストファー・プリーストの『スペース・マシン』を、赤ワインをなめながら読んでいた。おそらくそれだけで終わるかもしれないと思った。
しかし、地面がゆっくり、しかし大げさにゆらゆら揺れるのを感じて、酔いがさめていく。しかし同時に、このくらいゆっくりでは、遠いところの地震にちがいないと信じて、揺れはつづいていたが、ちょっと安心した。ただし、地震の場所では相当の被害が出ているにちがいないと思って気の毒になった。
それでも大きい揺れはつづく。遠いとは思ったものの、あるいは前例のないような地震であって、予想もつかないような壊滅的な可能性をはらんでいるのではないか、そう思ったときにはじめて怖ろしさを感じた。
その後、ゆっくりおさまっていったが、それでも何が起こるかわからず、落ち着かなかった。けっきょく、地震は終わった。だが、被害にあったひとたちにとっては、ここからまたドラマが始まるのだ。
震源地のあたりには、昔、お世話になってよく出歩いていたものだから、土地勘があり、それを思うとさらにお気の毒に思った。
ログインしてコメントを確認・投稿する