イギリスはもともとが階級社会であるために、作家も貴族階級によって成り立ってきていて、労働者階級出身の作家というとこのロレンスあたりが、最初の例になる、なんていうことは丸谷才一あたりからの受け売りに過ぎないのだが。
冒頭、炭鉱一家の暮らしがリアルに描かれ、イギリス資本主義の底辺のひとつを垣間見る。
だが夫婦関係、家族関係にねじれがみえてくる。
そんなことは古今東西、どこにでもありふれていること。
しかし著者はぐいぐいと問題を鋭く浮き上がらせていく。
世間では、息子のもつマザコンとかでひと括りされてしまうだろうが、女親への畏敬の念がつよすぎるとどんな性格が形成されるか、歯がゆいまでの優柔不断な生き方がみせつけられる。
生きる選択はずいぶんあるにちがいないのに、自己撞着にはまっていく。
ペシミスティックな語り口であり、希望が見当たらない。
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