今でこそ方言がもてはやされる時代になっているが、昔は遅れたもの、打ち消されるべきものと見なされていた。
今では、標準語の牢獄に閉じ込められたわたしたちは、方言の物珍しさに惹かれ、そのオリジナリティやローカルさにほほえましさまで感じる。
しかしほんとはそんなになまやさしい話ではないだろう。
なんとなくわかる方言ばかりではない。
ひと昔もふた昔もさかのぼれば、方言は理解をはばむもの、よそ者を拒絶するものとしてもはたらいていたにちがいない。
安岡章太郎が弘前の小学に転校したときのこと。
同級生の女の子のこう言われたのだ。
「わこと、ちょすれば、まいね!」
(わたしのこと、さわっちゃダメ!)という意味なんだそうな。
まちがいなく外国語である(笑)。
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