はじめの「ABC戦争」、まわりくどい争いがくすぶり、いったいどんな意味があるのかとイラつきもするが、やがて語り方こそが問われているのだと気がつく。
つまり書き手は遊んでいるのだから、それにつきあってあげるくらいの気持ちでいないとついていけない。
しかもじつに意図的なグロテスク・リアリズム。
つぎの「公爵夫人邸の午後のパーティー」は、いかにもと思わせるタイトルであるが、そんな思惑を断ち切るような運び。
みっつめの「ヴェロニカ・ハートの幻影」はいきなり在り来たりのリアリズムで押し寄せてくるのかと思っていると、やはりずらされてきて脚をすくわれる感じ。
じつに意識的な綴り方を試みていて、読む者と息があえば、喝采されるだろう。
つまりは読み手に媚びてはいけないということを学んだつもり。
阿部を読んだのははじめて。
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