カナダの東北部、過酷な自然に向かわないことには生きられない世界。
漁業とか鉱山とかの選択しかありえない。
そこで故郷を抜け出ることが若者の希望となり、著者が投影されている青年も似通った望みを抱く。
故郷を出奔することこそが、ある意味で近代の始まりだったといえるのだから。
この主人公はそれを達成し、いわゆる功をとげ、こんどは自分のルーツを掘り出し、懐かしむために故郷へと戻るにいたる(じっさいは故郷に帰れなくなってしまった境遇のひとたちとかも多いのだろうけど)。
硬質な文で、暮らしの、自然の過酷さを滲ませた、きりりとした作品を積み重ねていく著者。
その寡作さは際立っていて、出版ビジネスからは隔たり、自らの世界、その自己実現的な発展を自分の納得がいくようなやり方で綴っていく。
そんなやり方でしか出てこない味わいがある。
スコットランドからの移民社会、過酷さはその民族に根付いたものだろう。
しかも過酷さとは自然の美しさ、凛々しさに彩られているのみではなく、犠牲をもしいてくるのであるから、すべてきれいごとで済まそうというわけにもいかない。
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