カルロス・フエンテスの畢生の大作『我らが大地』が邦訳・刊行され、一部の方々のあいだで熱狂的な人気である。
わたしはその装丁を眼にして驚きを抑えられなかった。あのボスの「快楽の園」が用いられている。
わたしが持っている版は、メキシコの画家アルベルト・ヒロネージャの手になるもので、わたしはおおいに気に入っている。
そのほかにも他の版があるが、ボスの作品によって彩られているものなど、ありはしない。
読むまえにはなるべく中身を知り過ぎないようにつとめているが、フェリーぺ2世もボスのファンであったし、事実としてボスの作品とフエンテスの小説とはかなりかかわりがあるらしい。
しかしそれにもかかわらずメキシコの出版社は、ボスに触手を動かさなかった。
ヨーロッパに対する向こう側からの矜持であろうか。
「快楽の園」があまりにも隠喩的すぎるためであろうか。
よくはわからない。
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