食べ物を通じて世界を読み解くというやり方があり、今までにコーヒーやらバナナやらジャガイモなどを基にして意外な流れに気づかされたことがある。しかしここでは見事に大豆を媒介して、ニホンの、世界の読み換えに成功しているのに驚かされる。のみならずニホンの米文化対雑穀文化のコントラストが鮮やかであり、しかもいまの時代になって価値観の逆転さえ生み出そうとしているのを聞かされるとこの問題の重層性への認識をあらたにされる。しかもヴァーチュアルとリアルがいかにいまの時間に関わってくるかにも触れ、現代というものに丸ごと向き合っている。野心にみちた作品であるが、この野心が描き出すものはあまりに精巧である。長い知的冒険を体験させてくれる。
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