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2015年02月11日14:34

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大江健三郎『僕が本当に若かった頃』

(1) 初読だと思っていたが三つめの短篇にわたし自身の括弧マークが入っていた。大江とガルシア=マルケスの話し合いについてで、そこだけ参照したのだろうか。すると七つめの短篇での括弧マークにも出会った。ついには八つ目の短篇でも。あわせて三つも括弧が入っているということは、通読したということを否定できない。では読んだとしたら、どのくらい前に読んだものなのだろうか。とにかくほとんど何の印象も残っていないというのは、赦しがたい。一度読んだものならば、冒頭では思い出せなくてもしばらく読んでいると頭の底から浮かび上がってくるものがあるのではないか。わたしはむしろ恥ずかしく思うべきだ。

(2)大江は、その出発時から得意な文体で知られてきた。文壇系の文体とは異なった、翻訳的文体といわれるもの。わたしの世代は、そういうものにけっこう憧れたような気がする。しかしながら、わたしは自分の文体が大江のものに似通ってくるのではないかと懸念した(今から振り返ると杞憂でしかなかったと思うが)。だから何十年も読み続けながら、この数年はあまりよい読者ではなかったかもしれない。むしろ、文壇系の書き手も含めて、過去に埋もれてしまいかねない書き手のものを好んで読み、いわば見知らぬ世界を垣間見たいという欲望に襲われ続けた。(つまり内心では大江がいくら新しい作品を著してもおそらくデジャヴーを感じる作品ではないだろうかと、あまりにもの乱暴な思い込みにわたしは取りつかれていたともいえる)。

                                (つづく)
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