●「その『宗教』は本物か」 和賀眞也×花田憲彦共著 福音社 22年版 1760円
本書は、安倍晋三元首相殺害事件をけいきに、緊急に出版された本。それは、統一協会というカルトの特殊問題にどう向き合うべきかを広く伝えることと、今回の事件によって宗教全般に対する不信感や警戒感が強まることを危惧したからでした。
著者の和賀牧師（セブンスデー・アドベンチスト教団）は、1973年のインターン牧師（31）の時代に初めて統一協会問題に直面。1980年に、脱会者と共に救済団体「エレクレシア会」を発足させ、現在も代表を務めています。花田牧師（同教団）は、30年ほど前の学生時代の3年間を統一協会員としてすごし、脱会後に神学校を経て、現在同教団の牧師と福音者編集長を務めています。
本書はまず、キリスト教と統一協会の明白な違い（教典、メシア観）について述べます。教典は、キリスト教では旧・新約聖書のみですが、統一協会では「原理講論」（教理解説書）や「天聖経」（文鮮明の説教集）などです。メシア観では、キリスト教ではイエス・キリストですが、統一協会では文鮮明です。これは、イエスが十字架で死んだのは「使命を失敗した」からで、その結果、再臨が必要となり、その再臨主が文鮮明というもの。
救済の考え方です。キリスト教では「人類の罪のために死んでくださったイエス・キリストを信じる信仰によって救われる」としますが、統一協会では「万物（お金）をささげることによって、救いに近づけることができる」というもの。文鮮明によると、この世のすべての物（万物）の所有者は「真の主人」なのだと。「真の主人」、すなわち文鮮明であると。霊感商法などの経済活動や、信者の多額献金もこの「万物の主管主」である文鮮明のもとに取り戻すため（万物復帰）にやっている、という教えなのです。
和賀牧師が統一協会員に提案するのは、聖書と「原理講論」の共通の土俵は何かを確認することでした。それは、聖書でした。その上でそれぞれの教理を吟味するというもの。聖書を知れば知るほど、「原理講論」の矛盾点が浮き彫りになっていくのです。ちなみに、和賀牧師は「原理講論」は文鮮明が解明した教えではないこと。統一協会前に、彼が属していた「イスラエル修道院」（カルト宗教）の教祖・金百文が書いた「基督教根本原理」のコピーであることを明らかにしています。もともと文鮮明は北朝鮮出身で犯罪歴があり、朝鮮戦争の混乱に乗じて刑務所から逃亡した身で、いつ再逮捕されるかわからないでいました。そこで、延世大学出の李昌煥をかつぎあげて統一協会の創立会長になってもらっていた、という経緯があります。
統一協会と政治とのつながりです。日本の統一協会の始まりは、1958年に日本名・西川勝の密入国からです。西川勝の反共活動に注目したのが、右翼の大物・笹川良一で、笹川が岸信介元総理に統一協会を紹介します。その事情は、協会の内部機関紙「成約の鏡」で岸の講話として書かれています。岸は、共産主義と対決してくれる勝共連合（統一協会の別名）は味方であり、選挙にも大いに役立つ実力団体だと受け止め、双方は固い絆で結ばれます。このことについて文鮮明は、説教集などで「勝共で政治家を釣る、有名人を集めて一般民衆を釣る」と書いています。
ところで、古代から人々が抱き続けてきた人生に関する3つの大きな疑問があります。�／佑呂匹海�ら来たのか、��何のために生きるのか、��死後どこに向かうのか、です。その回答について花田牧師は、「神との出会いを通じて初めて得られる」と説明します。統一協会に入る人の動機は、真理を求め、神を求め、この地上に平和をもたらす神の国を造りたいという純粋な動機をもって献身した人々です。ですから、カルト宗教が現れたからといって、宗教そのものを否定してしまうのは人々に計り知れないダメージを与えると。そこで、宗教の重要性をもう一度見つめ返す必要があると、説いているのです。
和賀牧師は最後に、日本社会の課題や問題について「問題には、対話で臨むことが大切」と説きます。脱会させるにも、言葉を用いないとプーチンになってしまうと。言葉でやり取りして、こっちが本当だなって心から思ってもらわないと。押しつけじゃ駄目です。何よりも正しい言葉、信頼できる言葉。言葉のやり取りをすることがとても重要になっている、と説くのでした。
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