●「ミダスの河」 柄刀一著 祥伝社 18年版 1900円
副題が「名探偵・浅見光彦VS天才・天地龍之介」となっている。内田康夫の浅見光彦シリーズを受け継ぎ、そこに著者が創りだした天才・天地龍之介を合体させた、シリーズ1である。
ミダスとは、ギリシャ悲劇のミダス王のこと。ミダス王は、神から触れるもの全てを金に変える能力を与えられる。そのため、水も食料も触れたとたんに金になるため餓死してしまう王である。
本書では、武田信玄時代の甲斐の金山奉行をしていた小津野家を指していて、現代の人がその当主を「ミダス王」と称していた。その小津野家の金山にまつわる秘密がテーマとなっている。
冒頭に事件が2つ起こる。�仝�彦が関わっていた「抹消血幹細胞移植」を待つ少女のドナーとなった上園望美が、病院前で拉致された、�⊇�田から山梨に「砂金採りスアー」に参加していた龍之介たちが、殺人事件の第1発見者になったこと。
望美を誘拐したのは、一時望美と付き合いがあったひとしである。彼には黒幕がいて、望美が「ミダス王の隠し子」で莫大な財産を相続できる身分だと囁かれていたのだ。その黒幕との連絡が途絶えたことで、焦って望美を誘拐して事に及ぼうとしたのだ。
龍之介たちの砂金採りは川砂から採るもので、ツアーの面々と別れて上流に向かっていた時、岩にぶつかった車が荷台から死体を川に落としたのを目撃したのだ。その後、車は炎上し運転手は逃げていた。死体は、小津野財団の施設の職員だった。このこともあり、第1発見者である龍之介たち（従兄弟の光章と、光章のガールフレンド長代一美）は、近くの小津野会長宅に招かれることに。そこで、警察の事情聴取を受けるためだ。
一方、ひとしと望美の行方を追っていた光彦は、小津野家の私有地に入り込み警察に捕らえられる。殺人事件の犯人と誤解されるのだ。ここで、光彦と龍之介が小津野宅で合流する。ということで、名探偵の推理と天才の分析力が遺憾なく発揮され、皆に披露されていくという物語。
光彦からは、武田信玄公からの小津野家の歴史が明らかに（光彦の大学教授への取材から）される。武田家滅亡の折り、徳川家康に寝返った小津野家のこと。江戸時代、金山採掘から外された小津野家。この2代にわたる主家を欺いていた小津野家の隠し金山の秘密があきらかにされていくのだ。
その発端となったのが、東日本大震災であったこと。小津野家当主が、大震災がらみで小津野家の私有地（山を幾つも持つ膨大なもの。この中に、財団の施設や自宅がある）の崖崩れや断層その他の調査をしたのだ。結果は、「災害につながるような問題はない」とされたが、その調査会社の職員の1人が重大な発見をしていたのだ。その職員は、5年前に行方不明となっていた。
その重大な発見とは？ それが「隠し金山」では・・・。ということで、龍之介の天才的な分析が開示されていく、という物語。正直、話が盛り沢山過ぎてまどろっこしい。もっとスッキリしてくれないかなと思った本でありました。
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