mixiユーザー(id:2810648)

2023年01月24日12:47

70 view

読書紹介2261●「稚児桜」

●「稚児桜」 澤田瞳子著 淡交社 19年版 1700円
 本書には、能の曲目を下敷きに書かれた8つの短編が収められている。題目の「稚児桜」(第3話)は、能の「花月」を下敷きにしたもの。ここでは、過酷な稚児(幼い時に人買いから寺に売られ、稚児すなわと僧侶の閨の相手や下働き者となる)生活が描かれる。
 第3話では、僧に人気の稚児となった花月のもとに、その父親が引き取りにくる話。花月は、自分の代わりに(10年も経って、父親は誰が自分の子か見分けがつかない)稚児生活に馴染めずいつもいじめられている百合若を父親に差し出す。それは百合若のためもあるが、花月には父親の魂胆が見え透いているからでもあった。
 その他、本書は能に特有の「この世に怨みを残した者」の怨霊のような姿が描かれる。なんとも、オドロオドロしい人間の恐ろしさが描かれた本でありました。


0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2023年01月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031