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2021年07月16日12:29

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読書紹介2082●「戒名探偵卒塔婆くん」

●「戒名探偵卒塔婆くん」 高殿円著 角川書店 18年版 1400円
 どんな古い墓も、どんなに情報の少ない過去帳からでも、戒名さえわかれば死亡した年代、季節、年齢、身分、だいたいの人生まで把握してしまう。そんな高校生が外場くん。主人公の金満春馬の同級生である。
 春馬はお寺(金満寺)の次男坊で扶養(不用)家族。お寺は、元ヤンキーの兄が住職代理(父は本山の京都づめ)を務めている。この兄からの無理難題に、春馬は否(いな)がいえないのだ。
 第1話では、春馬の実家であるお寺の林から古い墓石が出てきた。兄が新規の墓地を造ろうとして見つけたのだ。法律では、1年間は縁故者を探さなければならないと定められていた。
 その役割が春馬にふられた。いうことを聞かないと、とんでもない虐待が待っている。そこで外場くんに相談すると、賄賂(高級和菓子)を請求され、瞬く間に縁故者の手がかりを見つけてしまうのだった。
 本書の圧巻は第4話「いまだ冬を見ず」で、ここでは生前に戒名をつくりたいと親族に募集した大企業の会長が登場する。その遠い親族の1人が、春馬と外場くんの担任だった。先生は外場くんに相談して、戒名をつくって応募。すると、気に入った戒名を提出した4組が招待される。
 外場以外は、著名なお坊さんがつくったもので、それぞれ会長の人柄や経歴が伺えた。ところが、外場の戒名は「釋星夜」という、訳のわからないものであった。その理由が語られると、皆はあまりのことに声も出なくなる・・・。という物語。
 第4話では、戦中に南方で玉砕した人物のこと。その地に埋まった1万5千余の戦友の骨を弔うために活動など、戦中・戦後の日本人の様子が赤裸々に描かれていくのでありました。

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