●「小説イタリア・ルネサンス4 再び、ヴェネツィア」 塩野七生著 新潮文庫 21年版 1200円
本書は、ヴェネツィアに呼び戻された40代のマルコが、政府中枢の要職に30年間在職したあとに引退し、亡くなるまでの物語。圧巻は、1571年のレパントの海戦である。
30年前には(本書3巻)、キリスト教連合艦隊が総指揮官であるスペインの海将(スペイン王からヴェネツィアの利益になる戦いはするなと命令を受け)の消極戦で完敗していた。今回は、スペイン王の弟を総大将にすえて(彼が、スペイン王の命令を無視して海戦に突入した)戦われたものであった。
トルコの軍船276隻対キリスト教連合国の軍船210隻で、圧倒的勝利を勝ち取るのだ。そこに至るまでの、キリスト教国の思惑とヴェネツィアの危機感が、臨場感をもって描かれていた。この戦いにマルコが果たした役割が、ヴェネツィアの海将たちとのやりとりのなかで熱く描かれるのだ。
レパントの海戦以後、ヴェネツィアが密かにトルコと友好条約を結んだこと。これにより、以後300年間(ヴェネツィアがナポレオンに滅ぼされるまで)平和を維持していく。マルコたち、ヴェネツィアの首脳陣の卓越した知恵の闘い(血を流さない戦争)を驚きをもって知らされた。益々、磨きがかかった塩野の小説でした。
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