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2020年08月03日10:09

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読書紹介1946●「比(なら)ぶ者なき」 

●「比(なら)ぶ者なき」 馳星周著 中央公論新社 16年版 1700円
 本書は、藤原不比等の野望を描いた本。史(ふひと)を不比等に改めたのは、持統天皇にその名を賜ったからだ。天智天皇の右腕だった父・鎌足は、壬申の乱(天智の死後、天智の子と天智の弟・天武天皇の戦い)で氏族の威光を失った。不比等は鎌足亡き後、自分をないがしろにした皇室と朝堂を恨む鬼となった。
 不比等の野望とは、その失われた氏族の威光を取り戻すこと。さらには、天皇との婚姻で藤原の娘が皇后となり、皇室が藤原家の一部になり、藤原の世をつくることであった。そのため、不比等は持統天皇(天智の娘で、天武の后)と手を組んだ。持統天皇は、子の草壁を玉座に就けたい、孫の軽(草壁と天明天皇の子)を玉座に就けたいという欲に負け、古からのしきたりを覆した(天皇が死んだら、これまでは弟が継いだ)のだ。
 不比等は、即位前に死んだ草壁や軽を天皇にするため、神代の古きより皇位は親から子へ受け継がれて来たという、万世一系の理念と歴史をつくらねばと考えた。そこで始めたのが、天皇家の系譜を一から作り直すことであった。
 こうして不比等は、「日本書紀」という神話と歴史の書を捏造するのだ。そのなかで、大王家(あとの天皇家)をしのぐ蘇我馬子の功積(仏教伝来その他)を厩戸皇子(聖徳太子という名も捏造)のものに置きかえた。こうして厩戸皇子を、仏教にも、孔子の教えにも、老子の教えにも精通した聖人とした。こうしてこそ、皇室の権威を天よりも高く持ち上げることができるのだ。
 ということで、天皇に忠誠を誓うふりをしながら、不比等は天皇の力を奪い(太政官制度をつくり、天皇を政治から除外した)、未来永劫に藤原家が続く力を確立していったのである。という小説。
 誰でもが感じていた事を、「あ、やっぱり」と思わせてくれた本でした。

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