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2019年09月13日13:58

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読書紹介1850●「則天武后 上・下」

●「則天武后 上・下」 塚本青史著 日本経済新聞出版社 18年版 各1700円
 則天武后こと武照の、生涯を描いた小説。地方官僚の父に可愛がられた武照は、美しく賢かったこともあり、15歳で後宮入りした。ときの皇帝は李世民で、唐朝を興した父・李淵を助けて、各戦線で大活躍したが、皇太子は兄・建成だった。
 唐朝統一後、世民は建成を滅ぼし皇太子に、そして皇帝へと登り詰めた、武照は世民の手がつき、「才人」という位についたが、出世はそこで止まった。1度っきりで、世民のお呼びがなくなったからだ。
 そんな時、世民の母の介護を担当していた武照は、9歳の世民の子・李冶(あとの高宗)と知り合う。李冶は、祖母の見舞いに毎日のようにやってきていたのだ。人見知りで病弱な李冶は、武照にだけなついた。そればかりか、武照を探して追いかけてくるのだ。
 この間、15歳で父を失った武照母子は、家庭では従兄たちに苛められ「才人」の給料も巻き上げられる。後宮では、他の宮女たちの嫌がらせを受けたりするのだ。武照は、この恨みを決して忘れなかった。
 宮廷では、世民の跡目を誰が継ぐかの争いがおこり、次々と上の者が蹴落とされたあげく、残ったのが9男の李冶だった。こうして李冶は、世民亡き後の皇帝になった。李冶は武照を見つけ出し、還俗させると称して寺を武照のために建てた。つまり、武照を愛人としたのだ。
 5年後、武照は晴れて李冶の後宮入りを果たした。その時には、李冶には皇后も愛寵がいて、後宮で争っていた。子のない皇后は、愛寵への李冶の寵を、武照をぶつけることで薄めようとした。ところが武照は、李冶の全ての寵を独占してしまったのだ。
 ということで、武照は優柔不断な李冶を操って、皇后もかっての愛寵も抹殺してしまう。皇帝のやる政治も、全て武照が取り仕切った(李冶が武照に任せた)。こうして皇帝は名ばかりとなり、武照によって李性の者(つまり皇族)が次々に弾圧されていった。かわりに武性の位をねつ造し、最高のものとしていったのだ。
 やがて李冶が崩御した。起って、武照は武性の周朝を興した。ここに、則天皇帝・武照が誕生したのだ。李性の者の弾圧に利用したのは、密告と酷吏だった。酷吏によって次々と冤罪が罷り通り、武照に反対する者たちが粛清されていった。やがて皇帝となった武照には、国民の怨嗟のもとである酷吏は不必要となり、彼らは罪を得て処刑されることとなった。
 ということで、手段を選ばず唐朝を奪い、周朝の皇帝となった武照の凄まじいやりかたが、これでもかと描かれた小説。ただ武照は、大国・唐の政治を動かす器量と能力も備えていたのでありました。


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