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2019年09月08日20:26

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読書紹介1849●「図書館の魔女 上」

●「図書館の魔女 上」 高田大介著 講談社 13年版 2400円
 本書は、架空の世界のある国の物語。ここには、「高い塔の図書館」があり、そこの主は「図書館の魔女」と呼ばれている。彼女は、まだ10代の少女だった。しかしこの少女は、何カ国語も操り、図書館のありとあらゆる本を読み、1度読んだものは全部覚えていると噂されていた。
 そればかりか、「高い塔」は王宮と議会の諮問機関として働いていて、その影響力は絶大なものでもあった。少女は、先代の「高い塔の魔術師」だった祖父から、代を譲られた直後であった。
 この高い塔に、12〜13歳の1人の少年が送り込まれた。名をキリヒトといった。表向き、彼は手話通訳者として図書館付けとなった。そう、魔女は耳は正常だが口が利けなかったのだ。
 ということで本書では、本について、図書館について、司書についての深い考察が描かれる。例えば書物については、「人がこの世界について何か新たに余人の知りえぬことを見いだしたと思ったとき、必ずや人は書物を著す」と。
 図書館には2人の司書がいて、1人は議会対策と法律全般を。1人は王宮対策と軍事全般を担当し、諮問に関わる提案を王宮や議会及び各主要人物に行っていた。その指示も、魔女がしていたのだ。2人の司書は間者を各地に張り巡らし、情報を収集していた。
 この国を、「一の谷」といった。一の谷は立憲君主政で、各辺境は「伯領」として独立していて、それらが連合して「一の谷」を構成していた。この連合を分断しようと。隣国の「ニザマ」から様々な工作が仕掛けられた。高い塔の代替わりを好機とみたのだ。
 その1つが、邪魔な魔女を暗殺することであった。ある日、キリヒトと郊外に遊びに出た魔女(近衛兵4人が護衛)は、巨大な化け物の刺客に襲われる。近衛兵が次々と倒されるなか、キリヒトが立ち向かう。その怪物を、瞬く間に殺戮したキリヒト。彼は、その姿を魔女に見られたことに恐れ慄くのだった。そうキリヒトは「切る人」、すなわち「一子相伝」の刺客であり、護衛者として魔女のもとに付けられた少年だったのだ。
 正体が暴かれたキリヒトの口から、これまでも影ながら魔女を護ってきたこと。また先代(父親)キリヒトも、「高い塔」に付けられていたことが語られる。魔女は、キリヒトも自分と同じく、自分の意思で今の任務に就いているのではなく、生まれながらの職務としていることを知る。そして、その悲しみの深さを知って涙するのであった。
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