●「馬・車輪・言語 下」 デイヴィット・W・アンソニー著 筑摩書房 18年版 3000円
印欧祖語は、前4500~2500年も間にカピス海と黒海の間のステップで話されていた。先史時代のステップは、牧畜経済（青銅器時代）によって完全に自給自足し予想外に豊かだった。彼ら遊牧民は、国家にさえ依存していなかったのだ。
前4200~4000年、それまで冗談半分で馬に乗り初めたものが、展開はゆっくりしたものだったが、やがて重い4輪車（ワゴン）や2輪荷車が開発され、2輪戦車も開発された。しかしこの変化は、今日の自動車の発明と同じ、社会を根底からゆさぶるものとなった。乗馬は牛・羊・馬の管理の効率化を促進した。荷車と合わせ、人の移動力が増した。前4200~4000年には、ステップでの襲撃と退去がスムーズとなり、部族間抗争が始まるのだ。
インドの「リグ・ヴェーダ」（前1500~1300年に編纂）によれば、アーリア人とはインド・イラン人（この共通語は前2100~1800年に話された）としてのアイデンティティーを持つ人のことで、「言語学的および儀礼的に一致した人」を差し、人種的なものではない。つまり、「伝統的な讃歌と詩を正確な形式を用いて、正しい方法で正しい神に犠牲を捧げれ」ばアーリア人となるのだ。
このような印欧祖語の制度とは、�（欷郤圓犯鏝郤坿屬寮戚鵑任爐垢个譴心愀検↓�客人と主人の関係でなりたっている。印欧祖語の当初の拡大（前3300年頃から始まる）は、侵略よりもフランチャイズ経営のようなものであった。つまり、豊かな（馬と車輪によって）牧畜民が農耕民のもとに行って（前3300から2000年に乾燥気候となり、農耕経済は打撃を受け、その重要性が下がった）、彼らの保護者となったのだ。
ワゴンと騎馬で、牧畜経済の規模が大いに高まった。前3100~3000年には、移住の波が起こった。ステップでは前1800年頃、2輪戦車が中国の殷王朝にまで普及したのである。
こうしてみると、馬のいなかった日本の縄文時代（1万年続いた）が、平和で戦争のない時代だった理由がわかる。縄文時代は、馬も車輪もなかった。しかし、平和だけはあったのでした。
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