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2018年09月28日12:30

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読書紹介1766●「泣き童子ーー三島屋変調百物語参之続3」

●「泣き童子ーー三島屋変調百物語参之続3」 宮部みゆき著 文芸春秋 13年版 1700円
 シリーズ3は6話を収録。第3話が「泣き童子」。子だくさんの看板屋の前に、臍の緒が切れたばかりの男子が捨てられていた。末子のお七が面倒をみ可愛がっていたが、赤子の末吉は3つになっても片言しか喋らない。ところがある日、火がついたように泣き出し誰が宥めても止まらない。そんな日々の中で、お七は末吉が泣き出す法則を発見する。それは、住み込み職人の蓑助の姿が見えると泣き出す、ということだった。
 しかしお七の話を誰も聞いてはくれない。手がつけられない末吉を大家が預かることになった直後、看板屋は押し込み一味に入られ、お七もろとも皆殺しとなった。蓑助だけが行方不明とわかり、彼が手引したことが判明した。幼児の末吉には、蓑助の企みを察知する能力があったのだ。
 大家に預けられていた末吉は、ここでは大家の1人娘を見ると再び火のように泣きだした。甘やかされて育った娘は、男に弄ばされていたことがわかり、その男を殺していたのだ。大家はそのことを知り、末吉の能力に恐怖した。娘は、泣き叫ぶ末吉に手をかける・・・。という物語。
 三島屋の「黒白の間」で、来客の話さずにはおけないでいる「変わり百物語」を聞くおちか(17歳)は、覚悟を決める。怪異を語るということは、人の世の闇を語ることだ。怪異を聞くということは、語りを通してこの世の闇に触れること。闇のなかに何が潜んでいるかわからない。そのわからなさをまとめて聞き取って、胸に収めてゆく覚悟がなければ、この聞き手は務まらないと。胸に収めるということは同時に、それを聞く者が浄められるということでもあったのだが。
 このシリーズの怪異譚だけれども、心がポッと温まるような気持ちにさせてくれて、もっと読みたいと思わせてくれるのでした。

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