●「あんじゅうーー三島屋変調百物語事続2」 宮部みゆき著 中央公論新社 10年版 1800円
「あんじゅう」とは暗獣のこと。本書の第3話に登場する。これは空き家の霊で、人恋しさに暗闇に育った「暗い塊」のこと。隠居した老夫婦が、2年間空き家になった屋敷を借りた。その屋敷には、女の幽霊が出ると評判だった。ところが、幽霊は一向に現れない。それどころか、空き家につきものの鼠も一匹も出てこないのだ。
やがて現れたのは、暗闇に巣くう「暗い塊」だった。その塊が夫婦に懐き、「アワアワ」と奇妙な声で鳴く(しゃべる)のだ。やがて夫婦に懐いた暗獣は、段々と小さくなった。人の気を浴び、段々消滅していったのだ。それに気づいた夫婦は、泣く泣く屋敷を後に・・・、という物語。
そんな話が4話。三島屋では百物語を集めるというが、それは怪異譚を集めるのではなく、人の想いを集めることのようだと、主人・伊兵衛はおちか(主人公)に語ったのでありました。
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