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2018年09月18日09:43

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読書紹介1763●「おそろしーー三島屋変調百物語事始1」

●「おそろしーー三島屋変調百物語事始1」 宮部みゆき著 角川書店 08年版 1700円
 主人公は、おちか17歳。神田三島町の三島屋は伯父の店であるが、おちかは女中奉公を願って川崎宿の丸千(実家)からやって来た。幼馴染の良助との結婚が真近になった時、子どもの頃から一諸に育った松太郎(捨子)が良助を鉈で殺し、自分も崖から身投げしてしまったのだ。「自分に咎がある」と思い込んでいるおちかは、川崎宿にはいられず、三島屋を頼ったのだ。
 ある日、三島屋夫妻が急用で出かけることとなった。その日は、主人・伊兵衛の囲碁仲間がやって来る日で、その相手をおちかは任された。女中からお嬢様への変身が必要だった。やって来たのは蝋燭問屋の藤兵衛で、おちかに人には言えなかった自分の身の上話を始めたのだ。それは恐ろしい話だった。話したことで、肩の荷を下ろしたように安堵した藤兵衛は、喜んで帰って行った。
 その話を聞いた伊兵衛は、懇意の口入屋に頼んで「変わり百物語」を聴いて欲しい人を集めてもらうことに。「1度に1人」を条件に、その話をおしまが伊兵衛の「黒白の間」で聴いてやる、という趣向である。
 ということで、シリーズ1では4話が語られる。この中には、おしまの第3話「邪恋」も入っている、という訳。伊兵衛が「変わり百物語」の聴き役としておちかを据えた意図は、広い世界には、さまざまな不幸がある。暗いものを抱え込んでいるのはおちか1人ではないこと。それをただの説教ではなく、他人様の体験談として聴かせることで、おちかの身に染み込ませようと考えたのだ。
 それにしても、宮部の筆使いは巧みだ。ほれぼれする江戸情緒。その言葉選びは、百戦錬磨の文章家のものでありました。

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