mixiユーザー(id:2810648)

2018年09月03日09:36

111 view

読書紹介1757●「誰かーー杉村三郎シリーズ1」 

●「誰かーー杉村三郎シリーズ1」 宮部みゆき著 実業之日本社 03年版 1524円
 ヒラノ教授シリーズの今野浩氏が、70歳過ぎでも分り易く読める本の作者として、内田樹と宮部みゆきをあげていたので探した本。
 本書である、三郎の義父・今多嘉親(財閥の今多コンツェルン会長)のお抱え運転手(土日のみ)の梶田氏(65歳)が、自転車に轢逃げされて亡くなった。犯人は少年らしいが、未だに名乗り出ていない。梶田氏の2人の娘(32歳と22歳)が、「父のことを本にしたい」と会長に相談したことから、三郎は義父に呼ばれ、その手伝いを申しつけられる。
 三郎は元出版社勤務で、嘉親が50歳の時に愛人に産ませた菜穂子と結婚する時の条件で、今多コンツェルングループ広報室勤務を仰せつかっていたのだ。姉妹には確執があるらしく、姉は出版には否定的だったが、積極的な妹に押し切られていた。こうして、出版のため梶田氏の過去を巡ることと、犯人探しが同時に行なわれることとなった。
 三郎は、事件現場で検証中に自転車に衝突され救急車で運ばれたり、梶田氏のかっての職場に赴き辞めた当時・28年前の事情を調べるのだ。やがて、梶田氏には人に言えない過去が浮かび上がる。同時に、姉妹の確執が顕わになってくる。妹が出版に拘る真の狙いが明らかになってくるのだ。
 その時、妹は三郎に「杉村さんの奥さん、嫌いよ。大嫌い! 何よ、上品ぶっちゃってさ」「何の苦労もしないで贅沢に暮らしてて、他人のこと見下してとやかく言って、何様だと思ってんのよ。フン、会長先生の愛人の娘のくせしてさ」「奥さんが妾の娘なら、杉村さんは男妾じゃない! 」と罵るのだ。
 人は、時に他人が裕福だというだけで「憎んでもいいのだ」という理屈をつくりだすことがあるのだ。

1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年09月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30