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2018年07月23日07:44

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読書紹介1744●「コルヌトピア」 

●「コルヌトピア」 津久井五月著 早川書房 17年版 1500円
  コルヌトピアとは、ギリシャ語で「豊穣のツノ」の意。ゼウスが赤ん坊のとき、雌山羊(コルヌトピア)がゼウスを世話し、自分の乳を飲ませて育てたという神話からきている。
 さて本書は、近未来小説である。人類は、植物の生理機能を演算に応用(つまりパソコン化)する技術ーーフロラを生み出した。本書の主人公・淵彦は、このフロムの開発設計会社に勤めている。ある日、東京を循環しているフロムに事故が起き、植物学者のヒタキと共に事故解明に取り組む。
 人類は、植物を利用しているつもりだったが、なかにはフロム化できない植物種(異端植物)がいた。この異端植物が暴走し、フロムの一部に火災が起きたのだ。そこで、調査員として淵彦が派遣されたのだ。淵彦は、首筋につける<角>ーーウムヴェルトを装着し、フロムの情報処理を脳に描出する技術に優れていたのだ。
 しかし、異端植物に淵彦のウムヴェルトが触れたとたん、意識を失ってしまう。やがて、人類は植物を利用しているつもりが、逆に植物が人類(動物)を利用して何らかの情報処理をしていることが明らかになる。
 そこに、淵彦が大学生のときに精神病院で出会った高校生・ツグミが、植物を解放するために事故を起こしていたことがわかってくる。これは、人類の情報処理にとって重大な危機となるもので、警察がうごきだしていたのだ。
 ということで、植物と人類が共生して生きるヴィジョンが示されていく。成程、あり得る未来だなー、と思った。ところで、コルヌトピアのツノからは豊かな実りが無限に溢れだす、これが<角>ーーウムヴェルトと似ていることから、この表題となったのでした。

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