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2018年04月16日10:38

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読書紹介1719・「落語に花咲く仏教」

●「落語に花咲く仏教」 釈徹宗著 朝日新聞出版 17年版 1400円
 落語家を取材するので読んだ本。本書では、日本の芸能のほとんどが仏教から発生していること。語りの芸能等(浄瑠璃、歌舞伎、講談、落語、浪曲、歌謡曲等々)が仏教の説教から発生してきたことを、系譜だて俯瞰して書いている。
 本書はもともと、著者が勤務する大学での「宗教と芸能」関係講座の内容を本にしたもので、学術的用語が多用されている。しかし、しばしば視野が狭くなりがちな宗教と、そんな宗教の性質を笑い飛ばす芸能の「体系や権威を脱臼させて拡散してしまう」性質の相互関係によって、双方に良好な関係が築かれてきたことを明らかにしている。
 本書には、「禁演落語や国策落語」という章がある。禁演落語とは、戦時中に演じることを禁止した落語のこと。それに代わって、国策落語という権力に追随する新作落語がつくられた問題だ。著者は国策落語について、「実に無残な落語がかけられた」「まことに悲しい事態である」と書く。国策落語には、芸能の本領である「権威を笑い飛ばす」機能が奪われてしまったからだ。
 芸能や芸術というものには、既存の枠組みを取外す役割があることを初めて知らされた本。「目から鱗」の本でした。

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