●「息の発見」 五木寛之or玄侑宗久著 平凡社 08年版 1400円
一言で云えば、呼吸法による健康法の対談本。しかし相手が五木氏と禅僧で芥川作家の玄侑氏、「生きること、死ぬこと」が息をするように語られていくのだ。
人間の内臓器官は自律神経で制御されているが、唯一息だけは意思の力でも少し制御が可能だ。だから、息を制御することで逆に自律神経(命)に影響を与えようというのだ。そんな息の不思議が、仏教のことともからめて話されていく。
なかに仏教の五戒(殺すな、盗むな、不倫するな、嘘をつくな、酒を飲むな)について、「永遠に守れないから、永遠の目標にできる」と。五戒は志であると言う。この文脈のなかで、憲法9条問題がとりあげられ「集団的自衛権の問題で、現実に合わせて9条を取り下げようとする。守れるものだけを掲げて、条文を現実に合わせてしまおうという考えかたは、ちょっとちがう。守れないからこそ掲げているんですけどね、われわれは」と。
憲法9条を永遠の目標とする。それを志すことで、現実を少しでも良い方向に変えていくのだ、ということに納得させられたのでありました。
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