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2017年08月02日17:50

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読書紹介1657・「パミールを越えてーー西域シルクロード物語」

●「パミールを越えてーー西域シルクロード物語」 陳舜臣著  04年版 1600円
 本書は、中央アジアの、特に新疆省を主な舞台にした9つの短編小説を収めている。時代は1920〜30年代にかけてで、この当時の中国は軍閥が跋扈し、日本が東北を侵略していた頃である。
 清朝時代の最後の新疆省長官は、楊増新という人物。彼は、清朝が滅び共和政体になると、中華民国に祝電を打ち、そのまま同じポストに坐り続けた。彼の信条は、「よけいなことをせず、自然にまかせる」という「老荘思想による哲人政治」という名の独裁政治だったが、中国本土が動乱に揺れ動いていたのに、新疆に17年ものあいだ、戦争のない、かつ強力な軍隊でおさえつけることもない「平和」を実現させてきたのだ。
 本書では、そんな愚民政治を貫き近代化を無視する楊増新に対し、不満をもつ若い官僚や人物たちのクーデターにより、彼が暗殺されてしまうことや、その後の戦乱に巻き込まれる事情が逐一描かれていくのだ。
 表題の「パミールを越えて」は、これらの小説群とは異質なもので、唐の時代の将軍・高仙芝の偉業が描かれた小説。本書では、冒険家スタインの著作から、彼の「パミール高原超え」を、カルタゴの将軍ハンニバルの「アルプス超え」の壮挙をしのぐものだ、としていることを紹介している。
 やっぱり、陳舜臣の本は良い、と思った本でした。

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