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2017年08月01日16:05

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読書紹介1656・「インターセックス」

●「インターセックス」 帚木蓬生著 集英社 08年版 1900円
 本書は、心にグサッと突き刺さった小説。インターセックスとは、性器が曖昧(両性具備)なまま新生児として生まれた人のことである。日本には、毎年千人弱が生まれている。
 日本では、性同一性障害の性転換手術(本人の意思による)はマスコミでも取り上げられるが、インターセックスは認知されていない。従って、彼ら彼女らは世間に知られないようひっそりと暮らしているのである。
 本書では、主人公の産婦人科医・翔子が、このインターセックスと真正面から立ち向かい、ドイツでのインターセックス本人たちの「自助グループ」に参加し、彼ら彼女らの苦難の歩みを聞くとともに、日本でも自助グループをつくる手助けをしようと奮闘するのだ。
 一方、彼女が新しく入社した九州の「サンビーチ病院」(生殖医療、小児の臓器移植技術が世界1)で相次いでおこった、5年前の5つの事故死のことが並行して描かれていく。
 インターセックスの場合、幼児は医師たちの晒しものにされる。そして、本人の意思に関わりなく医師によって、男か女に手術されてしまう(親の同意という建前で)。しかもその手術は、数回にも及び、かつ、必ずしも成功するわけでもないのであtぅた。
 翔子は、幼児での手術に反対である。本人が自分で選ぶ年齢に達したときに、選ぶことの大切さを訴えるのだ。そして何より、「男か女か」という2分法にも反対であった。「第3の性」があってもいい、という立場である。
 本書では、インターセックスで医師に勝手に男か女にされた患者の心の傷の深さと、彼ら彼女らが自らの意思で歩み出す逞しさまでが描かれている。
 インターセックスのことを初めて知らされた本。それも、日本に100万人近く存在すること。そんな彼ら彼女らに「希望」と「意味づけ」を与えるのが自助グループであることも、初めて理解することができたのでした。

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