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2017年04月26日10:52

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読書紹介1630・「魂の沃野 上」

●「魂の沃野 上」 北方謙三著 中央公論新社 16年版 1500円
 本書は、加賀の一向一揆を扱った本。本書ではこれを、加賀の風谷郷に領地を持つ地侍の立場から描いている。比叡山延暦寺の打ち壊しにあった本願寺から、蓮如は越前と加賀の境にある吉崎御坊(越前領)に逃げ延びた。ここで蓮如は、加賀に向かって農民を対象にした「講」を無数につくって布教活動を展開したのだ。
 しかし加賀には、真宗高田派が強盛で、同じ真宗なのに本願寺派と高田派は武力衝突をくりかえすのだ。この時、加賀の地では守護の座をめぐり、富樫政親と弟の幸千代が加賀を2分して争っていた。この争いは家臣団の争いで、政親の祖父の代から続けられていた。
 政親軍は、高田派を味方につけた幸千代軍によって、一時、越前領まで追いやられていたが、本願寺はを味方につけ、加賀の地に返り咲いていくのだ。ここで、本書の主人公・風谷小十郎が10代の若者でありながら風谷党を代表して政親軍に参加する。山での鹿狩りの要領をそのまま戦いに適用して、突破口を切り開くのだ。ここに政親軍は、活路をひらいていくこととなった。
 この戦いで小十郎は、本願寺派の門徒の指揮をまかされるが、門徒たちが多勢で念仏を唱えながらがむしゃらに突進して死んでいくのを目の当たりにする。小十郎は、門徒を戦いにかりだし人殺しをさせるのは信仰ではないのでは、との疑問を抱くのだ。
 こうして加賀の地から幸千代勢と高田派が駆逐されることに。政親は守護の座につき勢力をもりたてていくが、年貢は各地で滞ったままであった。これには、百性が寺への寄進が多く年貢にまわす分がなくなっているのが原因だった。
 かっての高田派はほとんど本願寺派に鞍替えしていて、寺の大坊主たちは私腹を肥やしすため寄進を募っているし、その地の地侍たちもその分け前にあずかって守護に盾ついていたのだ。
 政親はまず、年貢を納めない地侍の討伐から始めた。やがてその勢いは、本願寺派へと向けられていくようになるのだ。そんな守護と本願寺派との対立のなかで、中立を保っている風谷郷の小十郎の青春物語が本書である。

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