●「クロコダイル路地�機廖ヽЮ酣郢卉� 講談社 16年版 1800円
本書は、フランス革命（1789〜99）下での富商テンプル家の嫡孫ロレンスと、最下層民のジャン＝マリ（同い年）の、革命下での過酷な運命に翻弄される姿が描かれている。
ロレンスの祖父は、元イングランドの貴族で再び貴族に返り咲こうとしていた。母はフランスの帯剣貴族の娘だが、今は第３身分（貴族、僧侶の下）である。89年の革命で貴族制度は廃止、僧侶も革命政府に忠誠を誓う「宣誓僧侶」以外は廃されることとなった。
自由・平等・博愛をうたう革命はその後、ジャコバン党の独裁となり、庶民の暮らしは革命前の３倍の食料品の値上げや「国民皆兵」となり、戦争へと駆り立てられていくのだ。革命政府に楯突く者は、密告により無罪の者までもが断頭台の露と消える運命であった。国内では王党派の亡命貴族による反革命勢力との内戦が、国外ではオギリス、ドイツ、オーストリアなどの諸国との対外戦争も勃発していた。
革命に賛意を表明していたテンプル家も、やがて富商であるというだけで断頭台に送られた。これには、ロレンスのかっての家庭教師アルノーやミルズ（剣技の師）が関与し、テンプル家は崩壊させられてしまうのだ。
そんな中でロレンスを助けたのは、テンプル商会の副支配人のブーヴェだった。ブーヴェは、テンプル商会の資金をイギリスに移していて、ゆくゆくは自分の物にと狙っているのだが、唯一の相続人であるロレンスから譲られるという形（横領罪に問われないため）をとるためにロレンスを護り、イギリスへの亡命を図っていた。
一方ジャン＝マリは、革命のためドックでの日雇いの職を失い、教区のドニ神父の下で働いていたが、ドニ神父は捕らえられ牢獄に。ジャン＝マリは徴兵され、反革命軍との戦争に投入され、負傷兵となってナントに戻り、船大工の親方のもとで働くことに（若者がいなくなって、喜んで迎えられた）。
そこに、革命委員会のアルノーとミルズがやって来て、穴を開けた廃船を修理して２隻用意を命じられる。穴は薄板で塞ぎ、簡単に破れるように装えと言うのだ。これは、ナントに派遣された国会議員（ナントの独裁者）の命令であった。派遣議員は、フランスの人口は多すぎると捕虜の皆殺しを企んでいたのだ。捕虜を船に乗せて、一気に海に沈めようとしていた。その捕虜のなかに、ドニ神父がいることを知ったジャン＝マリは、王党派による捕虜解放に手を貸すことに。ジャン＝マリの乗った１隻は、捕虜解放に成功するが、もう１隻は海の藻屑と消えてしまう。やがてこの方法は、革命政府の方針となり全国でジェナサイトが横行していくのだった。
解放された捕虜たちは、近くに待機していたイギリス船でイギリスへと亡命。この船には、ロレンスもジャン＝マリも乗っていた。ということで１巻は終わり。
本書では、フランス革命の暗部が描かれていた。フランスの人口は多すぎると大量虐殺する理屈には、人権も思想の自由も許さない独裁化した革命政府の醜さが露わになっていたのでありました。
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