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2016年09月26日11:57

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読書紹介1574・「ハンニバル戦争」

●「ハンニバル戦争」 佐藤賢一著 中央公論新社 16年版 1850円
 本書は、第2次ポエニ戦争(前218〜201)を扱った本。主人公は、門閥派(貴族)のスピキオ(前236〜183)である。
 カルタゴ(北アフリカ)の将ハンニバルは、イベリア(現スペイン。ハンニバル一族が植民して支配)からアルプス越えをしてローマに攻め寄せた。10代のスピキオは、北イタリアから南イタリアまで席巻したハンニバルとの3度の大会戦に参加。その尽くに大敗したローマ軍の中で、辛くもローマに逃げ延びることができたのだ。
 ハンニバルの戦いはローマ軍殲滅作戦で、まるで魔術を使ったようであった。伏兵を隠し、突然現れてローマ軍を壊滅に追い込んでしまうのだ。この戦争(7年間)で、ローマ人は人口の半数を失うことになるのだ。
 ローマに逃げ帰ったスピキオは、古今の兵法書を読み漁った。しかし、それではハンニバルに勝てないと焦った。そこで辿り着いたのが、ハンニバルに学ぶことであった。こうして、ハンニバルに係わった人物たち(古参兵から象使いまで)を金を使って取材して5年。わずか26歳で、イベリアの総指揮官に立候補(執政官2人がイベリアで戦死。民間の総指揮官を募っていた)したのだ。
 40歳以上が総指揮官の常識だったなか、最初スピキオは相手にされなかった。しかし、「それでは誰がやるのだ」との反撃に、元老院は答える術がなかった。誰も立候補してこないからである。わけても、イベリアではスピキオの父と叔父が執政官又はその代理として出兵し戦死。又、イタリアでのハンニバル戦で、執政官の義父(妻の父)が戦死していたことから、スピキオこそ最適な人材(家門として)だったからである。
 ということで、イベリアでハンニバルの戦術を真似て大勝を得たスピキオ。ここで、ローマ軍の最大の弱点である騎兵を得るため、スピキオはアフリカのヌミディア族に同盟を持ちかける。イタリアでのハンニバル戦では、ヌミディア騎兵に散々な目に遭い、ローマ騎兵は太刀打ちも出来なかったからだ。
 やがて、どうにかヌミディア騎兵を手に入れたスピキオは、今度はアフリカのカルタゴ攻めに乗り出し、第1戦で勝利を収める。イタリア南部にハンニバル王国を築いていたハンニバルも、カルタゴ本国に呼び戻されることに。ここに、7年ものハンニバルのイタリア占領が解かれることになったのだ。
 決戦は、スピキオとハンニバルによるザマの会戦であった。凡庸な将であると自覚するスピキオが、天才ハンニバルを努力(ハンニバル戦術の2番煎じだが)で打ち破ってしまう、という物語。貴族のお坊っちゃまが、自分の凡庸さを認めたがゆえに勝利の道筋を掴んだという小説でした。

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