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2016年03月05日09:18

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読書紹介1506・「壺空ーー聖天神社怪異縁起」

●「壺空ーー聖天神社怪異縁起」　平谷美樹著　光文社　04年版　925円
　聖天神社怪異縁起シリーズの２作目。本書のテーマは、縄文から弥生への移行期（2300年前）に何があったか?　というもの。東北地方では、この移行は平和裡に行われたとされている。本書では、岩手県胆沢郡日高苫丑（とまうし）の「苫丑Ⅰ遺跡」の近くに、苫丑Ⅱ遺跡が発掘されたことから物語りは始まる。Ⅱ遺跡の跡から、祭祀場と祭祀に使われたと思われる土製品（有孔鍔付独鈷形土製品）が発見されたのだ。
　本書の主人公聖天弓弦（ゆずる）は、日高町の聖天神社の跡取り息子である。発掘現場から発し始めた異様な瘴気を感じた弓弦は、発掘調査補助員のアルバイトをすることに。遺跡の上の土砂が顕になったことにより、2300年前に封じ込められていた祭祀の内容（呪術）が現代に蘇ったのだ。本書は、その怪異に弓弦が立ち向かっていくという伝奇ホラー小説。
　発掘によって、やがて縄文から弥生への移行が平和裡ではなく、縄文人と弥生人（後に大和朝廷に滅ばされる東北の蝦夷）の激しい暴力（呪術争い）が伴っていたことが判ってくる、という物語。縄文時代は面白い、とつくづく感じさせてくれた本でした。

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