●「大東京三十五区ーー冥都七事件」 物集高音著 祥伝社 01年版 1800円
東京の区が35区あった、昭和6〜7年頃の話。主人公の早稲田の芋ッ書生にして、雑誌の種とり記者の阿閉万(よろず)は、明治時代の新聞から「明治怪事件録」なるものを板行(はんこう)しようとしていた。
本書は、この万が見つけてきた7つの怪事件を、万の下宿館の家主「玄翁先生」が、縁側に座りながら鮮やかに解いてみせる物語。最後に、玄翁先生の正体が明かされるという趣向がある。
本書の面白さは、万の粗忽ぶりとその対比である玄翁先生の洒脱ぶり。それに、面妖な謎と精緻なトリック等にある。なにより、昭和初年の東京人の語り口をそのまま文体にした味わいにある。これまで読んだことのない文体で、楽しませてくれたのでありました。
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