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2016年02月28日12:21

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読書紹介1504・「小倫敦(リトル・ロンドン)」

●「小倫敦(リトル・ロンドン)」 平谷美樹著 講談社 14年版 750円
 時は幕末。主人公は、横浜外国人居留地を管轄する外国奉行所同心・草間凌之介。凌之介は、徳川慶喜の大政奉還後の日本で幕府がどうなるかわからないなか、せめて自分が守っている居留地とそこにいる自分の知り合いだけでも守りたい、と思っていた。
 この居留地に「リトル・ロンドン」と呼ばれる処がある。英国人が中心に住み、自治組織も作っている。凌之介は、ここの住民ととりわけ仲がいい。彼らも、凌之介を通じて侍が英国騎士道と同じ精神を持っていると敬ってくれていたからだ。なかでも煙草屋を営むマクミラン氏には、事件解決のことで色々と世話になっている。マクミランは元大英帝国海軍謀報隊少佐で、様々な助言や事件の科学調査の手助けをしてくれるのだ。
 ある日、1人の商人がピストルで殺された。駆けつけた凌之介は、被害者の手に剣道タコがあること、側に粘土のようなもの(舐めると甘い)が落ちていたのに気づく。本書はこの粘土、評して「英吉利羊羹(えげれすようかん)」の正体を探るなかで、驚愕すべき事実に突きあたる、という物語。
 英吉利羊羹を持った凌之介は、帰り道で浪士たちに襲われる。攘夷派浪士が、居留地内で策謀を巡らしていることがわかった。早々マクミラン氏は、被害者の体内から取出した弾からピストルの種類やメッキの色を割り出した。ここでは、西洋と東洋のファースト・コンタクトとでも云うべき驚きが次々と紹介されることとなる。攘夷派浪士や、居留地にやって来る各国の外国人たちの考え方の違い、軋轢などが本書では描かれていくのだ。
 とても面白い小説。連載になることを期待したい。

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