●「でんだら国」 平谷美樹著 小学館 15年版 1600円
面白い本であった。江戸時代末、南部藩の支藩である外館藩は南部藩より5千両の上納金を要求されていた。それを賄うには、農民に新税をかける以外にないが、それにも限界があった。そこで、隠田探しが別段廻役(警察みたいなもの)に命ぜられた。廻役の舟越平太郎に大平村の隠田探しが命ぜられたことから、この物語が動き出す。
大平村は、飢饉の年でも損耗の届けが出たことがない村だった。それには理由があった。年寄りを山に捨てて、食い扶持を減らしているというのだ。棄老は大罪であった江戸時代だったが、領主と名主の間で「年貢を間違いなく納める」代わりに棄老を黙視する密約が交わされていた。
ということで、平太郎が大平村に入るのだが、彼の行動はことごとく村民の妨害に会うことに。実は大平村は南部藩と隣接していて、その境には御山があり、大平村の年寄は60歳を過ぎるとこの御山に入る定めとなっていた。御山の中に「でんでら国」という年寄たちの桃源郷が存在し、そこでは住民が互いに助け合い豊かな村落を築いていたのである。
でんでら国では、大平村の「知恵者」がそろっていて、当時の日本にまだ知られていないような様々な知恵が実践されていて、影ながら大平村を助けていたのだ。やがて、でんでら国の存在を確信した外館藩の役人が大挙して御山に押しかけるが、元気な老人たちに翻弄されてしまうのであった。やがて、思いもかけない結末が・・・。という物語。
惚け問題なども明るく描かれ、何よりも生き生きした老人の活躍が痛快な小説でありました。
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