●「吉祥の誘惑ーー採薬使佐平次3」 平谷美樹著 角川書店 13年版 1600円
8代将軍徳川吉宗の時代。採薬使とは、全国の野山から薬草等を採集・研究する幕府の役人のこと。彼らは、吉宗と共に江戸にやってきた者で、吉宗から直接命令を受けて活動する間諜でもあった。シリーズ3では、冒頭で吉原で備前屋徳兵衛が強壮剤を飲んで死ねところから始まる。
事件を担当した南町奉行所同心長坂省吾は、佐平次に協力を仰いだのだ。佐平次は、採薬御用の旅から帰ってきたばかりであった。そこで、廓に残された強壮剤の紙包みから、その成分が調べられる。中からは、スペイン産の特殊な成分が検出され、密輸入が行われていることが伺われたのだ。
早々に吉宗のもとに知らせにいくと、大岡忠相から同じような事件が各地で起こっていることを知らされる。同時に、目安箱に阿片が大量に含まれている刻み煙草の丸草が入れられていたこと。阿片中毒者が、大量に発生していることが分かったのである。それには強壮剤と丸草が使われ、別々のルートで江戸中に蔓延していることが突き止められる。
やがて、阿片を持ち込んでいるのが東北の某藩であることが判明。それは、津軽藩の隣の貧しい藩だった。こうして、採薬使と幕府御庭番たちは東北の藩に潜入することに。
息詰まる緊張感が続くなかで、次々に事態は展開していく。その先には、江戸幕府を揺るがす勢力の存在があった。果たして佐平次たちは・・・。という物語。海外事情にまで飛び火する、スケールの大きな物語でした。
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