●「幻のマドリード通信」 逢坂剛著 文春ネスコ 03年版 1600円
逢坂氏のスペイン物が好きである。本書の5話の内、第1話の「幻のマドリード通信」のみが、スペイン内戦中の日本大使館内での話。共和国(政権をとっていた)内の派閥である、コミニスト、アナーキスト等々が、スターリンの粛正の嵐がスペインにまで吹き荒れたためにおこった、スパイたちの物語。
あと3話は、内戦から40年以上たちフランコ死後のスペインの治安警備隊と、各地の自治独立派(武装集団)との謀略戦の話。残る第5話「ドゥルティを殺した男」は、内戦中に殺されたドゥルティというアナーキストの人気者指導者が、何故、どのように殺されたかを、40年後にあばいた物語。
尚、第3話「カディスへの密使」で登場する悪役・マタリフェ(極右の過激組織の攻撃隊員・暗殺者)の、人を殺すことの執念の凄まじさは、逢坂がもっとも重視している人物像で、見事に描かれていた。
逢坂氏のスペイン物は、全部読んでいたとおもっていたのに、本書を見落としていたので、読めて嬉しかった本でした。
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