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2015年12月05日13:15

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読書紹介1472・「遠くて浅い海」

●「遠くて浅い海」 ヒキタクニオ著 講談社 05年版 1714円
 消し屋シリーズ2作目。本書の主人公・将司は、消し屋という殺し屋である。一滴の血も流さず、遺体も跡形もなく消してしまうことから、この名が付いた。本書の舞台は沖縄で、依頼は「自殺させて欲しい」という難題であった。ターゲットは32歳の天才・天願。天願は18歳の時、新薬の基となる物質を発見(物質特許)。そして、その物質を応用して新薬を発明し、製法特許を取得していた。
 天願の母は、彼の4歳の時に死んでいる。彼には、母の死ぬ瞬間の(崖から飛び降り自殺)の記憶以前の記憶がない。天願が天才であることを発見した研究所が、彼を引き取り育て(飼って)観察してきた(観察記録が残っている)。16歳の時には、彼の頭脳と同じに成長した身体は22歳の青年のようで、身体能力もずば抜けていた。
 特許により天願は莫大な財産をもっていて、その金で自分の生まれた古里(既に廃墟となっていた)全部を買い取り、広大な屋敷と研究室を建てて暮らしていた。依頼人は、元ヤクザで天願の従兄弟の小橋川である。小橋川は、天願の特許の管理会社を経営していた。
 本書はここで、天願の物語が描かれていく。13歳で(身体は20歳位にみえる)、夜になると研究所を抜け出し那覇の巷で麻薬の売人をしたり、沖縄ヤクザと台湾ヤクザの麻薬取引現場に細工をして、現金と麻薬を奪ったりをゲームのように楽しんでやってきた。16歳の時、30名程のヤクザの組をターゲットにして「組の解体」実験を始めた。研究所でも、模型を作ってシミュレーションをしていた。
 結果は、ヤクザは仲間内で疑心暗鬼に陥り仲間内で対立し、乱射事件を起こして5人が死んで壊滅してしまうのだ。この組織を引き取りに本土からやってきたのが小橋川で、小橋川は簡単に天願の存在を突き止めてしまう。小橋川もまた、天願と同じ異常値をはじき出す天才(小橋川の場合は嗅覚)だったのだ。
 ということで、天願が自殺に至る経過(将司が、天願の脳の中に同期する)が描かれていったのである。いやー、面白い本でした。

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