●「天動説(一)−−江戸幻想編」 山田正紀著 角川書店 88年版 680円
時は天保の頃。江戸では奇怪な事件が相次ぐ。船頭ら全員が死んでいた千石船が品川沖に漂流したり、死んだはずの町娘が夜道を出歩いていたりしたのだ。そして、これらの周りには得体の知れない忍者や、大奥西の丸の局たちの影が。
本書では、町奉行所同心の次男坊・小森鉄太郎と同心(父が死んで兄が継いだ)の岡っ引き・仙三が奇怪な事件に挑んでいく。鉄太郎は同心屋敷を出て、汚い裏長屋で半纏を着込んで武士とも町人つかない格好をしている。昼間は剣術も苦手な、臆病で人が良さそうな風体だ。しかし夜になると、小森ならぬコーモリのように鮮やかな剣裁きを見せる。心眼が冴え渡るのだ。これは、仙三にも秘密にしていた。
やがて事件は、大奥の本丸(将軍・家慶)と西の丸(大御所・家斉)の争いに端を発していたことが明らかになる。そこには、蝦夷地からやって来たサタンやら吸血鬼の影がチラついていたのだ。
本書は、超娯楽作品の時代伝奇ロマン小説でありました。
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