●「世界は五反田から始まる」 星野博美著 ゲンロン 22年版 1800円
ここでいう「五反田」とは、「大五反田」という著者が命名する地域のことである。祖父が房総のいすみ市岩和田から、零細工場の丁稚奉公（13）でやって来たのが芝（現港区）白金（品川区に隣接）三光町（この地名は今は無い）。独立した五反田、工場移転した戸越銀座。この範囲は、JR五反田駅を中心に円を描くとすっぽり収まるのである。祖父は、この「大五反田」の円内で上京以後の生涯を過ごしたのだ。
本書では、この五反田から見える日本の姿を描いている。内容は、�〆�の「大五反田」の地域となどんなところか、��五反田が戦前、軍需工場地帯だった、�８淅薪弔鯢饌罎砲靴疹�説、小林多喜二の「党生活者」と宮本百合子の「乳房」（荏原無産者託児所のこと）の紹介、�ぢ�1次世界大戦中のスペイン風邪と祖父、�ヂ�13次満州興安東京荏原郷開拓団の運命、�κ瞳概，龍�爆で焼け野原に、�Ю洩鄒什扈蠅虜瞳�と最期、である。
興味深かったのは、小林多喜二の「党生活者」の舞台が、五反田にある藤倉工場であったこと。無産者託児所が最初に創られたのが五反田であったこと。さらに、無産者診療所が五反田に最初に設立されたことを知ったことである。つまり、革命運動にとって五反田は最重要な場所であった理由ーー軍需工場が密集していたことを知ったのだ。
著者は、コロナ禍で身動きできなくなり、五反田の実家から世界を見据え直して、本書を書いたのでありました。
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