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2023年03月11日12:28

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読書紹介2278●「約束の果て」

●「約束の果て」 高丘哲次著 新潮社 20年版 1600円
 伍州という大国の南端から青銅器が発見された。そこには金文で、「壙国のバ九、ジ南国の瑤花へ矢を奉じ・・・」と書かれていた。考古学者・斉河は、古文書を隈なく漁り2つの文書をみつける。ここから、壮大な物語が始まるのだ。
 古文書の1つは、偽史の「歴世神王捨記」。2つは、小説の「南朱列国演義」である。この2つにのみ、「壙国のバ九」と「ジ南国の瑤花」の記述があったのだ。こうして、2つの書物の真実が探究されていく。斉河の子・思原へ、思原の友人・田辺幸宏へ、幸広から子・尚文へと引き継がれながら調べられていく。それは、5000年前の神代の時代の伍州と、未開の地・ジ南国との攻防の物語であった。
 5000年前、伍州の全ては地神によって支配されていた。それを支えているのは、識人と呼ばれる異相の者たちである。識人とは、この世のあらゆる生きものたち(蟻や蜂、鳥や熊などなど)の王である。
 バ九は、伍州の北方の壙(穴倉)に住む一匹の蟻であった。伍州の中心・黄原での「宴礼射儀」に、壙の王に連れられたバ九は、射儀の競技者とされ弓矢を射た。矢はポトンと地に落ち、皆の失笑を浴びるのである。そんなバ九を慰めてくれたのが、瑤花であった。この2人の出会いが、伍州の運命を変えた。
 バ九は射儀の奥技を極めるため、寝る間を惜しんで励んだ。そんなバ九に、瑤花は菫の花の冠を授けてくれた。バ九は、約束(優勝したら送ると)の青銅器に矢を刻んだ胸飾りを作ったのだが、それを渡すことは出来なかった。優勝したその時、伍州は沽人に襲われ崩壊したからだ。識人たちは、伍州のはるか遠くに逃げ伸びていった。バ九は、無念のうちに亡くなる。
 だがバ九の執念により、その頭蓋骨はやがて蟻の巣となる。無数の蟻たちには、バ九の意志が宿り大きな身体を求めた。蟻は沽人の脳に入り込み沽人を支配した。伍州は、蟻に支配され恐怖政治が敷かれた。頭蓋骨だけのバ九は、無数の蟻を操る(沽人を操る)バ帝となったのだ。やがてバ帝は、伍州の外のジ南国を支配するため、バ九の第43201王子・真气をジ南国に送り込む。ジ南国は、花の王である瑤花が統べる国であった。
 やがて、「瑤花」の名を聞き覚醒したバ九の暴走が始まる。それが、バ九と瑤花の決戦へ・・・、という物語。恐怖とファンタジーが綯い交ぜとなった、神代の物語でありました。

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