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2015年04月26日09:27

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読書紹介1394・「マジック・オペラーー2・26殺人事件」 

●「マジック・オペラーー2・26殺人事件」 山田正紀著 早川書房 05年版 2000円
 黙忌一郎シリーズ第2部作目。本書のテーマは、2・26事件である。2・26事件の前夜に、置屋の密室で芸者が刺殺される。猟奇殺人である。しかしこの「乃木坂芸者殺人事件」は、どこからか横槍が入って「なかったこと」にされてしまう。
 一方、青年将校たちの「維新運動」の陰で密かに陰謀が進行していた。北一輝の影である占部影道が、「皇軍相撃つ」という破壊活動を狙っていたのだ。そのために、「二十面相」ともいわれる変装名人の遠藤を使っていた。1に、相沢三郎中佐に化けて永田鉄山・軍務局長を惨殺。2に、真崎甚三郎中将に化けて青年将校たちに偽の「檄」を発したのだ。ここに、もはや2・26事件の勃発は止めることができない事態へと進行していた。
 占部たちは、貴族の子弟たちからなる憲兵隊特高部・通称「狐」を動かし、2・26を内乱状態にすべく暗躍する。一方、検閲図書館(本書ではまだ、この機関は謎のまま)黙忌一郎(20代)は、東京の博徒百人・香具師百人を束ねる猪の鹿のお蝶の力を借り、この陰謀阻止のために立ち向かう、という物語。
 果たして、乃木坂芸者殺人事件とこの2・26事件はどこでどう繋がっているのか。本書では、特高刑事・志村(小林多喜二を殺した人物と思われている)が、課長の命令で忌一郎に面会するところから始まる。忌一郎は、小菅刑務所に無決囚(未決でも既決でもない)として収監されているのだ。ただし、刑務所の内外を自由に出入りすることができた。彼は「検閲図書館」と呼ばれ、すべて検閲され、無視され、抹殺され、貶められた「歴史」の理非を弁別し、その復権をはかるために、永遠に無決囚として収監されるべき人物であった。
 江戸川乱歩風にいえば、変装名人・遠藤が怪人二十面相で、忌一郎が明智小五郎、志村が小林少年役、ということで物語は進行していくのでありました。

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