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2015年03月09日17:31

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読書紹介1384・「ほんとうの花を見せにきた」

●「ほんとうの花を見せにきた」 桜庭一樹著 文芸春秋 14年版 1400円
 本書は、竹のお化け「バンブー」なるものと、人間との関わりを描いた本。バンブーは、基本的に年を取らないので、永遠の若者の姿をしている。それに、滅多なことでは死なない。だが太陽の下では生きていけず、夜に活動する。食糧は血である。吸血鬼と同じである。
 中国の山間部にバンブーの王国を築いていたが、人間に追われて一部が海外に脱出した。それが日本に辿り着き、日本の貧民街に隠れ住んでいた。この時の日本は、高台の方に富裕層が、海に近くなるほど貧民層がと住み分けられていた世界である。
 富裕街に住んでいた10歳の梗ちゃんは、4番目のお父さん(中南米からの移民)が組織のボスの女と金を持って逃げたため、その報復のために母と姉を殺されてしまう。梗ちゃんもあわや! というところで、血の匂いを嗅いでやって来たバンブーに助けられ、それからバンブーに育てられることとなった。
 本書では、永遠に年をとらないバンブーと、日々成長する人間の子供との儚くも哀しい共同生活が描かれる。その対比がとても切ない。この時代では、人間は理由なくすぐ死んでしまう。まして貧民街では、死は日常の出来ごとであったのだ。
 ということで、10歳の梗ちゃんが女の子に化け(組織が報復のため梗ちゃんを探していた)、18歳になるまでバンブーと隠れ住んでいたこと。その後、この地域を出て60歳になって戻ってくると、バンブーは昔と少しも変わらぬ姿であったことが描かれている。なんとも切ない小説でありました。

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