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2023年07月17日06:21

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読書紹介2314●「イタリアン・シューズ」

●「イタリアン・シューズ」 ヘニング・マンケル著 東京創元社 19年版 1900円
 本書の主人公は、元外科医のフレドリック(66)。スウェーデン東海岸群島の突端に位置する小さな島に、ひっそりと1人で住んでいる。島にはあと、名前のない犬と猫がいるだけ。外界との接触はときどき船でやってくる郵便配達人1人という、世間から隔絶した暮らしを12年間続けている。
 ある冬の日、彼の目が遠くに人の姿をとらえる。双眼鏡で見ると、40年前の恋人・ハリエット(72)だった。ハリエットは氷の上で、両手に歩行器を持っていた。40年前医者だった彼は、アメリカに留学が決まっていた。出発する翌日を「出発日だ」と嘘をいい、彼はハリエットを捨てたのだ。理由は、彼女が自分に近づきすぎたから。
 外科医だった彼が小島に隠遁したのは、20歳の水泳選手の手術に失敗したから。本当は右腕をガンのため切断する予定だったものを、左腕を切断してしまったのだ。大惨事である。理由はいくつもあった。担当医が当日来られなくなり、急きょ彼にお鉢が回ったこと。助手のいうまま、確かめもせず切断してしまった。その上、そのガンでは腕を切断する必要がなかったことが後になってわかった。
 それ以来、祖父母が残した小島の家で世間から隔絶(テレビもラジオもない)し、1人暮らしてきた。それが、ハリエットの出現で激変するのだ。ハリエットはガンで、余命いくばくもなかった。彼女は、20代だった彼の「1番美しい約束を果たしてもらう」ためやって来たという。その約束とは、彼が10歳の時に父親と行った「湖に彼女を連れていく」という約束だった。
 こうして、ガンの傷みを酒と鎮痛剤でごまかしている彼女を連れ、湖に向かったフレドリック。その道中でいろいろなことが起こるが、約束を果たして帰ろうとする彼に彼女は「もう1か所行ってほしい所がある」と。その場所は森の中で、トレーナーハウスに女が住んでいた。女はルイース(40)といって、彼女の娘だ。彼女はルイースに「あなたのパパを連れて来た」といったのだ。驚愕する娘とフレドリック。彼は、自分に娘がいたことの悦びを噛み締めるのだった。
 少し前まで、彼は小島のベットに横になって「私の人生はこれまでで、もうなにも新しいことは起きない」と思っていた。ルイースと会ったことで、彼の気持ちは変わることに。小島に戻った彼は、元水泳選手・アグネスに連絡をとる。手術のことを謝りたかったのだ。アグネスの元に赴いた彼は、そこでアグネスが3人の少女(問題を抱えてた)の面倒をみていることを知る。片腕となった水泳選手が、やっと見つけた生き甲斐が少女たちの面倒をみることだったのだ。
 小島の彼の元に、アグネスが面倒をみているシア(14)がやって来る。モーターボートを盗んで単身でやって来たのだ。シアには居場所がみつからなかった。それを探しに彼の元にやって来たのだ。シアは生きることに絶望していた。それは、彼女の生い立ちのなかにあった。シアはフレドリックと居て安心した。それが彼女を次の行動に移させた。全身をナイフで切り裂いて自殺したのだ。
 シアが引き取られた後に、ハリエットとルイースがやって来た。ハリエットが「最期を島で迎えたい」と。どんどん痩せて骨だけになっていくハリエット。傷みで絶叫をあげる彼女を、2人で介護する。やがて、最期のときがやってきる。その頃アグネスは、施設として使っていた家を家主から追い出されることに。フレドリックは、アグネスに「小島を提供する」と申し入れる。
 12年間の彼の生活は、次々と変貌していくのでありました。

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