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2022年07月28日14:43

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読書紹介2207●「夜がどれほど暗くても」

●「夜がどれほど暗くても」 中山七里著 角川春樹事務所 20年版 1600円
 「週間春潮」副編集長の志賀は、「出版の世界は売れたもの勝ち」とアイドルや有名人の不倫やスキャンダルを売る仕事に誇りを持った仕事人間だった。その志賀に警察から連絡が。1人息子の健輔が、自分のゼミの教授宅に押し入り夫妻を殺し、自分も現場で自殺したというのだ。
 この瞬間から、志賀は取材される側となり、殺人犯の親として糾弾の嵐を浴びることに。その手法は、これまで自分たちが使っていた芸能人のスキャンダル取材と同じ過酷で容赦ないものであった。マンションには落書きされ、電話は鳴りっぱなしとなる。
 職場では副編集長を解かれ、同じ会社の「春潮48」という月刊誌の1記者に転属された。この「春潮48」は、右翼ヘイト本で、保守層の支持でかろうじて生き延びている月刊誌で、抗議の電話が毎日のようにかかる職場であった。健輔は、そんな父の仕事を嫌って、大学入学を機に都内で1人暮らしをしていたのだ。
 一方、被害者である星野家には中2の奈々美が1人残されていた。その奈々美が、志賀夫妻の前にカッターをかざして襲い掛かる。「一生許さない、恨んでやる」と嘯くのだ。しかしその姿は華奢で、志賀に簡単に抑えられてしまう。
 奈々美の言葉に怒りが収まらず、志賀は奈々美の家を覗きに行く。そこには壁といわず玄関ドアまでスプレーで「悲劇の主人公はココ」「天罰」などの落書きが。翻って、星野宅に狼藉を働いた者たちは、どんな心理で悪意を放出しているのか。
 志賀に対し放たれた悪意の矢は、そのほとんどが正義感に名を借りた憂さ晴らしに過ぎない。しかし、マスコミに取り上げられている人物(星野宅)を叩いて憂さを晴らしたいというなら、既に薄っぺらい正義感ですらなく、卑怯者の嗜虐に過ぎない。
 奈々美は中学でイジメを受けていた。身体に傷跡が絶えないのだ。イジメの現場に駆けつけた志賀。止めようとした志賀は、中学生の容赦ない暴力に大怪我をする。それでも、奈々美を「庇護しなければ」という想いを抑えきれないのであった。
 こうして、被害者家族と加害者家族の奇妙な接近が始まる。担当刑事は、それは「奇跡だ」と言うのであった。そんな中、星野家が放火される。家に閉じ込められた奈々美は、志賀に助けの電話を。やがて、張り込んでいた刑事が放火犯を捕らえて・・・。こうして、最後のどんでん返しを迎えることに。という物語。


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