●「救済のゲーム」 河合莞爾著 新潮社 15年版 1800円
本書のテーマはゴルフ。救済のゲームとは、打った球が木の上に乗った場合は、罰則なしに木の下に降ろして再スタートできるというもの。
舞台は、「神の木」と言われる樹齢4800年のブリッスルコーンパインがはえるゴルフ場。この木には伝承があった。19世紀、金鉱目当てに入植したヨーロッパ人が、アメリカ先住民の部族を皆殺しにした場所で、騎兵隊の隊長が「勝利の旗」を立てようとこの木に登り、雷に打たれ、樹上から落下して、脇の木柱に胴体を貫かれて死んだ、というもの。
そして現在、このホーリーパインヒル・ゴルフコースで、全米プロゴルフ選手権が開催される前日、昨年引退した全米1のキャディー・トニーが「神の木」の前でピンに胴体を串刺しにされて死んでいたのだ。猟奇殺人である。
これを発見したのが、本編の主人公でプロゴルファーのジャック(日系3世)とジャックのキャディー・ティムだった。そこに現れたのが、捜査官のヒューズ警部。2人がインディアン印の帽子を被っていたことから犯人と疑われ、早々に取り調べを受ける。ヒューズ警部は、「神の木」の伝承を知っていて、2人を疑ったのだ。
やがてゴルフを知らない警部は、ジャックを捜査協力者にする。それは、ジャックがハーバード大学で「進化心理学」を首席で卒業した人物であることを知ったからであった。ところが翌日、またもや胴体を木柱に貫かれて死んでいたスミスという人物が発見された。
2つの殺人が発生したことから、ジャックは「ゴルフに関わる不正」の存在に気づく。それは、昨年の全米プロゴルフ選手権で、プロの最高峰の記録を残して引退したロビンソンとそのキャディー・トニーが、「神の木」の前でゴルフボールを見失い、それをスミスが発見したという事があったからだ。
ということで、ジャックの「進化心理学」を武器にした推理が始められる、という物語。ゴルフのことはまるでわからないが、ゴルフが審判のいないプレーで、「裁くのは良心だけ」という紳士のスポーツであること。そこから生じる様々なことを、知らされた本でありました。
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