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2019年11月29日14:48

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読書紹介1872●「静おばあちゃんと要介護探偵」

●「静おばあちゃんと要介護探偵」 中山七里著 文芸春秋 18年版 1400円
 80歳の静は、日本で4番目の女性裁判官だった。今もって後進の育成のため講演を行ったり、法科大学の臨時講師を務めたりしている。そして、請われて名古屋法科大学の客員教授になることとなった。
 この名古屋法科大学創立50周年記念講演の講師に招かれ、そこで下半身不随で車椅子(介護用車両と運転手及び介護士を常雇いしている)の70歳の香月玄太郎という、地元建設業社長と出会った。この玄太郎が本編の主人公・「要介護探偵」である。
 本書のテーマは、老人問題である。今日、老人は金持ちで若者は貧乏という構図があり、その老人を若者が「ふりこめ詐欺」等で狙って、なけなしの金品を奪っている。一方、貧しい老人は若者にとって替って万引きなどの犯罪に走っている。いまや万引きは、老人専門の犯罪と化した感がある。
 65歳以上の高齢者の犯罪(窃盗、暴力、傷害)は10年前の3倍。娑婆にいるより刑務所のほうが3食保障されるというので、再犯が絶えない。そのため、どこの刑務所も老人でいっぱいになっているというのだ。
 玄太郎は、地元の中部経済界の重鎮で国民党副幹事長の後援会長。彼のことを拝金主義だと貶める人がいる一方で、清濁併せ呑んだ傑物と心酔している者も少なくない。玄太郎は、自分が出会った事件に警察を手駒のように使って恥ない。
 傍若無人で居丈高の態度で、警察をこき使う。静の嫌いなタイプであったが、なぜか玄太郎は静を気に入り、2人で降りかかってきた事件の探偵役を務めることとなったのだ。
 ということで本書では、大学構内のモニュメント(高さ4m)の爆破と、そのモニュメント内から死体が出てきた事件。株を扱ったことのある老人(老人の情報が売られている)を集めた「転換社債詐欺」。年金生活者の88歳の親を軟禁し、年金を子供が勝手に使う「老人虐待」。などなどを、玄太郎が解決していくのだ。痛快な要介護老人の物語でした。

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