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2019年11月04日11:56

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読書紹介1866●「瑕疵（かし）借り」

●「瑕疵（かし）借り」　松岡圭祐著　講談社　18年版　1900円
　「瑕疵」で思い浮かぶのは、「瑕疵不動産」である。瑕疵不動産とは、アパートなどで自殺者があった場合、その部屋が瑕疵不動産となる。貸主には告示義務が生じ、その部屋の価値が下がるのだ。しかし次の賃借人が入ると、その次の賃借人には瑕疵が薄れたものとして、告示義務がなくなる場合がある。
　本書では、賃借人が①原発作業員のガン死、②事故死した女性、③部屋で自殺した青年、④部屋で急死した主婦と、その家族や知人の関係を扱っている。いずれも、死亡した直後に「瑕疵借り」する人物が現れる。その人物が、本書の主人公・藤崎である。
　それぞれの関係者がその部屋を訪れ、藤崎に「貸主から雇われたのだろう」と批判をする。それに対し冷静沈着に、藤崎は訪問者の意図を推察していくのだ。それは瑕疵不動産が、単に心理的な瑕疵だけではなく物質的瑕疵（不動産そのものの瑕疵や不動産に係わる人的瑕疵など）の否を精査していたからであった。
　本書では、死亡した人への思い入れのある家族や知人の疑問（彼らの悩みや後悔などにもとずく）を解き明かし、物件には心理的瑕疵しか残っていないことを証明する、藤崎の特殊な仕事（表向きは無職）を描いていた。
　世の中には、「こういう事情もあるのだ」ということを知らせてくれた本でした。

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